保護者談義に見るピアノ発表会のあり方

保護者談義に見るピアノ発表会のあり方
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発言小町という掲示板でこんな発言を見つけました。

子供(小学3年)がピアノ教室に通っています。一般的な個人のピアノ教室です。
先生は50代、生徒は20名くらい。小学生が8割、幼稚園児と中学生が1割ずつ。
先日、ピアノ発表会がありました。
3年に1度くらい開催しているらしく、うちの子は初めての参加でした。
生徒の他に、ゲストが2名(先生の元教え子で今はプロのシンガーソングライターの男性と、その奥様(フルート))が参加しました。
子供たちが淡々と演奏を進めていく中、ゲスト2名の演奏の時だけピアノをしっかり拭いたり、照明を変えたり、演奏後に先生とゲスト2名に立派な花束を差し上げたり、正直、ピアノの発表会って誰が主役なんだろう…と感じてしまいました。
ちなみに会費として8000円取られています。内訳は会場費と花束代とのことですが、生徒たちは最後に一輪の花を貰っただけです。会場費も町民会館なので1日借りても1万円。ピアノも備え付けなので楽器の運搬費もかかりません。
・・・

これに対して、

ゲスト二人はいらないと思います 子供達を主役にしてあげないと…

とトピ主(トピック=話題提供者)に同情する人もいる一方、子ども演奏だけで終わるというピアノ発表会では

トピ主さんのお子さん達の発表会のほうがプロの演奏付きで羨ましいです。

という声もあり、また

一般客が見てもいいように、わざわざプロを呼ぶし、お子様たちもいままでの集大成的な曲をひくし、おめかしもする。
プロの方にも失礼がないように、花を持たせるので、照明もかえるし、ピアノも拭くし、文字通り花束もわたす。
彼らは本物のわけですからね。音楽の世界では大先輩なわけですし、子供たちにも、「素敵だなー、私もああなりたいなー」って思ってもらいたい。

という反論もあり、大学生男子と高校生女子の母親からは

プロの演奏が聴けたのはよいことだと思いますよ。プロの生演奏、小さい子供たちにはなかなか聴く機会がありませんよね。
・・・
そうした「生」の演奏を聴くことは、自分が演奏する上で大いに役に立つと思いますよ。
プロの演奏者に花束、本来演奏料も派生するところ、おそらく無料(お花だけ)で受けてくださっているのだと思います。

という指摘と推察もありました。さらに

発表会はお子さんの晴れ舞台だと思っているようですが、違います。

お金を払って参加させて頂くものです。
日頃の練習の成果を発表しあう、貴重な勉強の場です。
同じ年頃の生徒さんの演奏を聴いて、刺激を受ける。
大きいお姉さんの演奏を聴いて、あんなふうになりたい、頑張ろうと決意を新たにする、そんな場です。

という断定もでてきました。

上記の発言を読んでどう思われたでしょうか?
ピアノの指導者から見ると「ピアノ発表会は勉強の場」というのが正論に思えるかもしれませんが、ピアノ教室の経営者の視点に立つと「ピアノ発表会を子どもの晴れの舞台」として演出が欠けると、顧客に不満を残し、教室離れにつながる -- というリスクを見て取ったかもしれません。
ネットの掲示板での意見交換では、親バカにみられそうなカッコ悪い"本音"より、いちばん"正論"そうな発言にのっかって意見を述べる傾向があります。
ですから発言小町では、「ピアノ発表会では子どもを主役として扱ってほしい」という最初の発言が、「ピアノ発表会は勉強の場」という"正論"に圧倒されているように見えますが、"支配的な意見" = "本音" というわけではないことに注意が必要です。

ピアノ発表会の方向性を主催者が打ち出す

ピアノ教室の運営者にとって、大切なことは、ピアノ発表会に対する考え方は保護者によっていろいろだということをまず認識することです。
その上で、発表会を主催する側として、この認識の違いを埋めて、ピアノ発表会を成功に導く必要があります。
さいわい、この認識の違いを埋める作業はそれほどむずかしいことではありません。
なぜなら、上記の発言のすべてに、一点だけ共通項があるからです。それは

ピアノ発表会は子ども(生徒)のため

というものです。その後、あくまでも子どもを主役にするかどうか、熟練者(プロ)をゲストに呼ぶかどうか、料金の相場はどんなものか という話が付随していると捉えることができます。
ですから、ピアノ発表会を立案する最初の段階で、「生徒のため」というのを基本理念として強調し、そのうえでどのようなピアノ発表会を目指すのか、主催者としての方向性をドンと打ち出していきましょう。つまり、「勉強の場」なのか、「生徒の晴れの舞台」なのか、あるいは、2つの折衷案なのか、主催者がまず、スタンスを示します。その後、アンケート等を実施し、生徒側の希望(負担できる費用帯など)を訊いてもいいでしょう。
どういうスタンスをとるにせよ、生徒にしっかり練習を積むように指導し、彼らの演奏を成功に導く必要があります。結局、ピアノ発表会では、先生の指導力が露わになるのですから。
そしてピアノ発表会をさらなるステップアップする起点として活用するために、CD/DVDに記録するのも有効です。

まとめ

ピアノ発表会の位置づけは、保護者によってパラバラです。しかしだれもが共通しているのは「ピアノ発表会は生徒のため」という点です。ですから、ピアノ発表会を主催する教室は、立案段階で、「生徒のため」という基本理念を掲げたうえで、どのようなピアノ発表会を目指すのか、主催者としての方向性をドーンと打ち出しましょう。ピアノ発表会を「勉強の場」にすることも、「生徒の晴れの舞台」することも可能ですが、両方の折衷案をとることもできます。いずれにせよ、生徒にしっかり練習を積むように指導し、彼らの演奏を成功に導く必要があります。ピアノ発表会では、先生の指導力が露出してしまうから。

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