音楽動画はスマホで撮るな

音楽動画はスマホで撮るな
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我が子の演奏風景をスマホで撮影して、音楽動画にしようとする人がよくいます。日々成長していく子どもの一瞬一瞬は貴重な瞬間で、それを動画にして保存しておきたいと思う気持ちはよくわかります。また、演奏自体も成長していくので、写真ではなく、音楽動画として音源をとっておくことは重要です。ですが、それをスマートフォンで行うのには無理があります。どんな達人が行なっても、スマホでは満足のいく音楽動画は録れません。それはスマホの構造自体、音楽動画を録るのに適していないからです。もちろん、スマホ撮影は、周囲の迷惑という面もありますが、そのことはおいといて、ここではスマホの構造上の弱点を解説します。

スマホの構造上の弱点

スマートフォンには、購入した初期段階からすでに動画撮影機能や音声録音機能がついていて、操作も簡単です。とくにスマホの静止画の画像解像度は高く、デジタルカメラの売り上げを落とす原因になっています。しかしこのことは音楽動画撮影においても、スマホは優れているということにはなりません。音楽動画制作の実務において、スマホには以下の弱点があります。

1. マイクとカメラが直角になっているものが多い

iPhoneの一部の機種を除いて、カメラは前面または背面、マイクは側面の上部または下部というのが一般的です。つまり、動画を撮影しようとすると、マイクがカメラと直角になり、音源に対してマイクをまっすぐ向けられず、周囲のノイズを録音してしまいます。では、マイクを音源にまっすぐ向けたら、今度は映像が撮れません。

2. マイクは音源との間のノイズを拾う

1の問題を解決するために、外部マイクをつけるとします。これなら、カメラもマイクも演奏者をまっすぐ捉えることができます。しかし演奏会を客席から撮影する場合、必ず、音源とマイクまでの間に空間が生じ、その空間に響くノイズをマイクが拾うことになります。たとえ、最前列真正面から撮影したとしても、ステージの床のきしみ、周囲からの雑音やその反響、撮影者のちょっとした身じろぎなどが録音されてしまいます。

3. 音声形式・動画形式が音楽動画制作に向かない

スマホの動画はメモがわりの、ちょっとしたメッセージや備忘録の録画として使われることを想定しているようです。たとえば、孫からのメッセージを動画撮影して、遠くにいるおじいさん、おばあさんに見せるようなケースです。ですから、スマホで扱いやすいなるべく軽い、圧縮された音声形式・動画形式が採用されています。そのため、音楽動画を制作するには、音質も画質も十分ではありません。とくに後々まで、記録として残しておきたい場合はNGです。

デジタルビデオカメラなら、高品質の音楽動画が作れるのか

スマホがダメなら、デジタルビデオカメラにすればいいじゃないか、とお考えかもしれません。たしかにデジタルビデオカメラなら家庭用でもハイビジョン撮影が可能ですし、マイクも前面についているので、音楽を正面から捉えられそうです。でも、上記2の「音源との間のノイズを拾う」の問題は残ります。
ふつうの動画でも、音質が悪いのは致命的です。視聴者は画像が多少乱れても我慢してくれますが、ノイズが多く音が聴きづらい場合は、すぐに逃げてしまいます。まして音楽動画ならなおさらです。

録音と撮影は別々にしよう

最近のピアノ発表会は、本格的な音楽ホールで行われることが多くなりました。そのような音楽ホールでは、たいてい天井に吊りマイクが設置されており、プロの音楽家のコンサートのライブ録音に使われたりします。こうしたマイクや録音設備は有料で使用できるので、ぜひ利用しましょう。ただし、マイクや録音設備は細かな調整が必要ですので、こうした機材を使いこなせる人材を配置する必要があります。
当然、録音スタッフは専任となるので、撮影は撮影スタッフを配します。

市民ホールなどでのピアノ発表会の場合も、録音は専任スタッフをおきましょう。ホール側がマイクや録音設備を貸してくれることがありますが、音楽の録音用ではないので、性能は期待しない方がいいでしょう。それよりレコーディングエンジニアに依頼し、録音機材を持ち込んでもらう方が確実です。

ピアノ発表会を音楽動画にするには

ピアノ発表会は子どもの成長を音楽動画として記録する絶好のチャンスです。と同時に、そのときのその演奏は、生涯に一回きりの貴重なチャンスでもあります。
音楽動画の制作に絶対に失敗しないために、万全の態勢を整えましょう。
とはいえ、一生徒の保護者という立場では、「万全の態勢」を整えるのは無理です。
そんなときは、他の保護者とも連携して、ピアノ発表会を主催する教室を巻き込みましょう。教室主導でピアノ発表会を音楽動画にし、ネット動画やDVDの形にして、保護者がそれを買い取れば、全体として安く高品質な音楽動画が手に入ります。

まとめ

子どもが日々成長するように、子どもの演奏も成長していきます。子どもの演奏を音楽動画して保存するのは意義のあることです。しかし、スマートフォンの動画撮影機能は構造的に問題があり、音楽動画制作には向きません。音楽動画を制作するには、ピアノ発表会などのチャンスを捉え、録音と撮影はそれぞれ専用の機材を使いこなせるスタッフを付けて、高品質の音源を収録しましょう。個人でするのは無理なので、教室が主導して音楽動画を制作し、生徒側が買い取る形にするとうまくいきます。

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