実践: 勝手にダウンロードさせない動画配信

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最近、あるクライアントから自社のホームページから動画コンテンツを有料で配信するシステムの構築を依頼されました。作業は非常に難航しましたが、重要な知見も得られました。これから、動画コンテンツの配信を目指す方の参考になれば、と思い、報告いたします。

YouTube が利用できないわけ

動画を配信したいなら、YouTube で決まり。
なに? 有料配信したい? なら、YouTube で限定公開にして、アドレスを購入者に送ればいいでしょ。
なに? 自分のホームページから配信したい? ホームページに YouTube のアドレスを埋め込めばいいでしょ。

そんなふうに考えていませんか?
じつは、これではダメなんです。
YouTube の動画は簡単にダウンロードされてしまうから。

平成24年(2012年)の著作権法の改正以降、無断ダウンロードは違法と明確に位置付けられるようになり、国産のダウンロードアプリはあまり見かけなくなりました。しかし、ダウンロードサイトはまだ健在です。
ダウンロードサイトとは、動画のアドレスを指定すれば、直接目的の動画にアクセスし、ユーザーのパソコンに動画ファイルをダウンロードする機能を提供しているサイトです。サーバが国内にないためか、取り締まりの対象にはなっていないようです。そのせいか、いくつも似たようなダウンロードサイトがあり、厄介です。

ダウンロードではなく、視聴制限

この問題について、2年前、勝手に動画をダウンロードさせない方法 という記事で指摘しました。
動画のダウンロードを阻止するには、動画ファイルをおくサーバサイドで対応しなければなりません。
そのため、対応策として、自社のホームページ内に会員専用サイトを設け、そこでのみ、動画のダウンロードを許すという方法を提案しました。

しかし実際の案件では、この方法は役に立たないことが判明しました。
クライアントは、視聴期間を制限を付けることを要求したからです。
考えてみれば、当然の要求でした。
動画を含め、情報は陳腐化しやすく、保存する必要はあまりないのです。むしろ、必要なとき、アクセスできたらいいわけで、ダウンロードの必要はないのです。
逆に、ファイルの形でダウンロードされてしまったら、悪意があってもなくても、流出する危険は常に伴います。

ふむふむ。ときどき、クライアントから大事なことを教わりますね。

難航を極めたシステム開発

必要性は納得したものの、実際に視聴制限をするシステムの開発は、難航を極めました。購入者ごとに視聴期限を設定していく必要があるからです。さらに扱う動画の本数も200本を超えるなど、桁違いに多く、ともかく考えに考えました。ほんとうに脳みそが擦り切れそうでした。結局、動画配信者が購入者にパスコードを発行し、そのパスコードで、動画を呼び出すという方法で、なんとか、システムを実現しました。

当然、ダウンロードサイトからのアクセスをブロックしたりなど、さまざまな対策も講じました。
鉄壁とはいいませんが、ふつうのレベルのユーザーでは動画ファイルを取得するのは無理といえるまでセキュリティを上げることができました。

やっぱり優れた動画は売れる

実際に、視聴制限付き動画配信システムを構築して、一番うれしかったのは、システムをリリースした直後に、待っていたかのように注文が入ったことです。
注文の入った動画は、あるレッスンを動画で丁寧に解説する内容でした。やはりコロナ禍ということもあり、外出してレッスンを受けたりするのではなく、家に居ながらにして、マイペースでレッスンが受けられるのであれば、有料でも欲しいということでしょう。もちろん、動画の質がよいことが最大の勝因です。有料動画もニーズがあることを確かめられたのは、大きな収穫でした。

YouTube のようなソーシャルメディアを見ていると、近年、動画の質は飛躍的に上がっているように思われます。動画制作をする人が増え、質を上げないと、埋没してしまうからでしょう。しかし、せっかく質のいい動画を作っても、YouTube ではスポンサーを付けることでしか収益を上げることができません。結局、ソーシャルメディアでの配信はせいぜい動画を拡散させるくらいにしか用途がなく、動画コンテンツそのものを売るのには向きません。

やはり動画を売るのであれば、自社サイトで、動画配信システムを構築したほうが確実で安全です。

まとめ

YouTube ではなく、ホームページ上に、勝手にダウンロードさせない動画配信システムを構築しました。その経験から、動画コンテンツを売るためには、動画ファイルをダウンロードさせるのではなく、動画ごとに、視聴者と視聴期間を制限することが欠かせないということがわかりました。

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